2007年09月18日

ウォーキングと病気と健康

よく歩く人は健康。このことを否定する人はよもやいないだろう。脳卒中、高血圧、高脂血症、肝臓病、糖尿病、骨粗鬆症など生活習慣病の予防になるほか、気分がすっきりして不眠やストレスの解消にも役立つ。無論、美容にもいい。「風邪は万病の元」という言葉があるが、まさに「ウォーキングは万病の薬」と言ってもいいだろう。今回は「ウォーキングと病気と健康」をテーマに取り上げてみた。

   

▼歩かないとどうなる

 歩くことが健康にいいということを具体的に示した研究として古くから有名なのは、イギリスのある医師の研究である。今から半世紀も前、彼は、心臓病で死亡したロンドンの二階建てバスの車掌と運転手の数を調べて、日常車内を歩き回っている車掌よりも一日中座っている運転手の方が心臓病で死ぬ確率が倍くらい高いことを示した。ファミリーバイク、マイカーなどが普及して、ほとんど歩かなくても生活できるようになった現在、この運転手の状況は決して他人ごとではないだろう。

 ウォーキングがいかに健康に大切かを端的に示す例として、宇宙飛行した時の体力低下がある。宇宙空間では重力がないため、通常の日常作業だけでは心臓や筋肉に負担がかからない。指で壁をチョンとつつくだけで簡単にからだの移動ができるし、心臓も重力に逆らって血液をからだに送る必要がない。これでは、寝たきりで運動をまったくしない状態とほとんど同じだ。

 このため、ロシアの宇宙ステーションやアメリカのスペースシャトルで宇宙から地球に帰還したばかりの宇宙飛行士たちは、足腰が弱り、心臓機能も低下している。滞在期間の長いロシアの宇宙飛行士などは、帰還直後は立つことすらできないことが多い。このため宇宙飛行士は宇宙船の中で毎日、エルゴメーターなどで運動をすることが日課となっている。しかしそれでも帰還後のリハビリは必要だ。人並み以上の健康と体力、筋力を持つ彼らですら、運動不足には勝てないのである。    

▼職業と歩数

<現代人の一日の平均歩数>
職  種 歩数
サラリーマン 5,800
セールスマン 5,700
O L 5,380
技術職 4,600
管理職 4,490
公務員 5,700
教員 小学校 6,730
中学校・高校 6,070
大学 5,500
保母 6,950
自由業 4,830
自営業 6,750
主婦 4,500
無職老人 2,800
休日在宅(有職者) 2,930

 毎日意識的に歩いている人を除くと、職業によってその人の一日の歩数がある程度推定できる。日本万歩クラブの調べによると、サラリーマンの一日平均歩数は5,800歩。外に出ることが少ない技術職は4,600歩。教員の場合は、小学校6,730歩で中学校・高校では6,070歩、大学では5,500歩と、高学年になるにしたがってだんだん減ってくのは興味深い。  

 特に、主婦は4,500歩と少なく、問題が多い。また無職老人となると2,800歩。また、普段外で働いている人も、休日には2,930歩と少ない。最近では、農家といえども機械化が進み、それほど足腰を使わない。こうして見ると、厚生省などが推奨する一日1万歩を確実に実践している職業はそんなに多くなさそうだ。

 新聞記者はあまり長生きしないといわれる。夜駆け、朝駆けの不規則な生活や、酒やタバコの多い生活習慣が最大の問題と思われるが、それとともに、あまり歩かないことも理由の一つになりそうだ。

 例えば、警視庁詰めの記者には会社からハイヤーが与えられる。朝晩には自宅へハイヤーの送り迎え。三度の食事も警視庁からハイヤーでレストランに直行。無論、夜回り、朝回りもハイヤー。これでは一日千歩も歩かないのではないか。休みもほとんど取れないから、週末に運動することもない。このため、2年間の警視庁詰めで体重が5キロ、10キロと増えた記者を私は数多く知っている。彼らはまだ30歳前後と若く、それでただちに健康を害することはないが、警視庁詰めが終わってもこの不健康な生活習慣が抜け切らず、50歳ごろにはあらゆる生活習慣病を抱える、などということもまれではない。    

▼脂肪を燃やそう

 現在は飽食の時代である。そのうえ車社会が進んで多くの人が運動不足である。必然的にからだには余分な脂肪がつき、血液中にはコレステロールや中性脂肪が増える。このため高脂血症、動脈硬化、高血圧となり、心臓病や脳卒中などの危険性が増大する、というわけである。

 ウォーキングは、心肺機能を高め、からだの脂肪を燃やしてくれる。厚生省の国民栄養調査からも、一日の歩行数が多い人ほど、血圧は低く、善玉コレステロールの値は高く、皮下脂肪の量が少ない、ということが分かっている。

 食事から得られた糖質はまず、腸から消化吸収されてブドウ糖に代謝される。その後、肝臓に入ってグリコーゲンとなって蓄えられる。さらにこれが血糖となって血液で全身に運ばれ、各細胞のエネルギー源となり、余った血糖は脂肪としてからだに蓄えられる。

 運動を始めるとまず、筋肉中のグリコーゲンがエネルギー源として消費される。しかし数十分もするとグリコーゲンを使い果たして、次にからだの脂肪を分解してエネルギー源として使うようになる。むろんこの時、血液中の血糖値も下がる。ウォーキングはこのようにして、たっぷり時間をかけて大量の酸素を吸収し、からだの余分な脂肪を燃やしてくれる。    


一日の平均歩数(歩/日)
〜2,000 2,000〜 4,000〜 6,000〜 8,000〜 10,000〜
総HDL(善玉)コレステロール値が40r/dl未満の人の割合(%) 14.2 12.8 12.1 9.4 8.5 7.6
総コレステロール値が260r/dl以上の人の割合(%) 10.0 8.2 6.6 5.2 6.2 4.7
トリグリセリド(中性脂肪)値が150r/dl未満の人の割合(%) 31.7 28.8 29.8 25.3 24.9 25.6

(「国民栄養の現状」平成9年版より)


▼心臓病予防に

 エアロビック・エクササイズの重要性が初めに強調されるようになったのは車社会が進んだアメリカだった。脂肪分の多い食事、糖分の多い飲料、ほとんど歩かない生活が、肥満や動脈硬化を招き、その結果として、急激な心臓病患者の増加を生んだのだ。  

 そこでアメリカを中心に爆発的に起こったのがジョギングブームだった。エアロビクスの一種のジョギングは確かに心臓病の予防に効果はあったが、自分の健康状態を正しく把握していないと危険な面もある。実際、1984年、ジョギングの教祖と呼ばれていたジェームス・フィックス氏が心臓病でジョギング中に急死すると、周囲から反省の声が出るようになった。

 そこで現在、多くの医療関係者が心臓病などの予防にウォーキングを勧めるようになった。健康づくりという面を強調してエクササイズ・ウォーキングと呼ぶ人もいる。    

▼糖尿病にも

 運動療法と食事療法は糖尿病治療の両輪といわれるが、特に運動のなかでもウォーキングなどのエアロビクスは糖尿病に最適といわれている。運動をするとからだがインスリンによく反応するようになり、その結果として血糖値が下がるからだ。また、血液中の中性脂肪が減って動脈硬化を抑えるなど、合併症の予防にもなる。    

▼骨粗鬆症にも

 宇宙飛行士が宇宙飛行をすると、骨の密度が著しく低下することはよく知られている。常に運動をして筋肉に負荷をかけてないと、骨の密度がすぐ低下してしまう。骨粗鬆症が心配なお年寄りにとって、過激な運動は骨折の心配があり逆効果になりかねないが、ウォーキングなら心配ないだろう。転倒が心配なら、杖を持って歩くのもいいだろう。立派な英国紳士もステッキを持って歩いている。別に恥ずかしがることはない。    

▼ストレス解消にも

 運動はストレス解消に有効だ。仕事の悩み、失恋の痛手、勉強の行き詰まりなど、汗をたっぷりかくと、いつの間にかすっかり悩みが軽くなっていることに気が付く。そしてその快い疲労感は、深い眠りとなってさわやかな朝が迎えられる、というわけだ。

 しかし、このストレス社会では、私たちは毎日ありとあらゆる種類のストレスにさらされている。「ストレスは翌日に持ち越さず、その日のうちに解消する」が理想である以上、運動も毎日したいものだ。その点、通勤途上にできるウォーキングは、最適だろう。仕事で疲れたら、その夜はいつもの手前の駅で降り、歩いて帰宅するとストレス解消にもなる。

 ストレスから解放されれば、仕事も勉強も進む。古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、アテネ郊外に学園リュケイオンを創設、逍遥学派と呼ばれていた。アリストテレスが、学園の歩廊を逍遥(そぞろ歩きをすること)しながら弟子に教えたことから、こう呼ばれたのだ。どうやらウォーキングは、勉強、仕事の能率も上げてくれる効果がありそうだ。
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タグ:病気と健康
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posted by nana2 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(2) | 健康 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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